皆さんが戦国時代で勝ち負けを左右すると思う要素はなんだと思いますか?
兵力?
指揮官?
それとも地形?
もちろんそれらも大きな要素ですが、ここで忘れてはいけない存在が、「陣形」。
この陣形によって、戦国時代では多くの戦の勝敗を決めてきました。
ということで、今回は今まで考案されてきたことがある、「八陣」と呼ばれる8つの陣形の種類+1つをご紹介していきたいと思います!
陣形の歴史
まずどのようにして八陣と呼ばれる8つの陣形が使われるようになったかを説明していきましょう!
起源は中国
これらの陣形は日本だけのもの、と思う方も少なからずいるかと思います。
しかし、この陣形の誕生の地は意外にも中国だったのです!
約4500年程前の中国で風后という者が創ったと言われていますが、伝説上の話であって詳しいことは分かっていません。
山本勘助の改編
日本には平安時代に伝わってきたとされていますが、これらの陣形は昔の物ということもあり理解しにくい状態でした。
それを戦国時代に、武田信玄の軍師山本勘助が理解できるようにと陣形を作り直したと言われています。
こうして武田家が近代的な陣形を創ったので、主に武田家が陣形を多用することになります。
陣形の解説
いよいよお待ちかねの陣形の解説へと移っていきましょう!
一覧
まずは今回ご紹介する8つの陣形をすべて1枚にまとめたので、これを見て気になる物から見ていって下さい。
①其の壱 鶴翼の陣
この陣形は8つの陣形の中でも有名で、良く使われる陣形の1つです。
鶴の翼のように見えることから鶴翼と呼ばれるようになりました。
翼のようにV字型になって兵を分散させ、真ん中に大将が置かれるような形です。
長所
横に広く兵を置いているので、V字の真ん中に敵軍を誘い込めると敵軍を包囲しやすく、撃破することができます。
挟み撃ちや囲まれるのに兵が弱いのは合戦の基本なので、これは大きな長所です。
短所
ですが基本的に、包囲をするには敵軍より圧倒的に兵数が多い必要がありました。
兵数が少ないと、鶴翼の陣の様に兵を分散させる陣形は、全体的に守備が薄く中央突破されやすいからです。
実例
鶴翼の陣を使った戦としては
- 川中島の戦い(第4次)で武田信玄軍が上杉謙信軍に対して、鶴翼の陣で別動隊到着まで持ちこたえる
- 三方ヶ原の戦いで徳川家康軍が武田信玄軍に対して、鶴翼の陣で応じて信玄軍より兵が少なかったため惨敗
- 関ヶ原の戦いで石田三成率いる西軍が、徳川家康率いる東軍に鶴翼の陣で応じ、裏切りなどによって敗北
などがあります。
②其の弐 魚鱗の陣
この陣形は、鶴翼の陣と同様に多用された陣形です。
魚の鱗のように見えるので魚鱗と呼ばれるようになりました。
△の形に兵を集め、一番後ろの真ん中に大将が置かれます。
長所
兵力を集中させるため、敵の陣形に一点を集中攻撃し突破することができます。
また移動が早くなるので、奇襲攻撃などに向いています。
短所
一方兵を集める分、軍が小さくなり包囲されやすいのが弱点です。
なので、敵が鶴翼の陣でなおかつ大軍で来られると、敗北が確定するようなものでした。
実例
魚鱗の陣を使った戦としては
などがあります。
③其の参 鋒矢の陣
この陣形は、↑の形に兵を配置する陣形です。
矢の形に見えるので鋒矢と呼ばれるようになりました。
大将は、↑の後ろ(下)に置かれます。
長所
この陣形は魚鱗の陣と同じく先が尖っているので、正面突破に強い陣形で攻撃力だけで見ると、魚鱗の陣より強い陣形なんです!
短所
しかし↑のIの部分が細長いため、側面を突かれやすく魚鱗の陣同様に包囲されやすいため、防御力は魚鱗の陣よりも弱く、実戦で使われる例は少なかったそう。
実例
なので実戦で使われた例は少ないのですが
などがあります。
④其の肆 偃月の陣
この陣形は半月型に兵を配置する陣形です。偃月とは半月という意味なのでそのままですね。
大将は半月の一番前に出て戦うので、勇敢な大将しかできない技でした。
長所
大将が先頭に立って戦うので、兵たちは大将を見て士気が上がり、兵たちは大将を失ってはならないと必死になって戦うことができます。
短所
大将が前に出ることは士気が上がりますが、リスクが付き物。
大将が戦死する可能性だってもちろん高いです。
なので「背水の陣」とも呼ばれたりします。
実例
大きな戦では使われた形跡がありません。
⑤其の伍 方円の陣
この陣形は兵を円の形に置く陣形です。
こちらも円という形から名前が付けられたことは分かりますよね。
大将は円の真ん中に位置し、防御型の陣形でした。
長所
360度対称に配置しているので、どこから奇襲が来ても側面を疲れることがなく、うまく対応することができます。
また他の陣形に変化することも容易いので、攻撃的な陣形に移して攻撃することも可能でした。
短所
ですが、完全なる防御体制なので、包囲するといった攻撃的な行動がしづらくなります。
しかも兵が分散されるので、長期戦になるとどこかが突破されてしまう恐れがありました。
実例
大きな戦では使われた形跡がありません。
⑥其の陸 長蛇の陣
この陣形は縦一列に兵が置かれ、大将が真ん中に配置される陣形です。
蛇のように長いことから長蛇そう呼ばれるようになりました。
長所
縦で見るととても兵の列が厚いので、少ない兵でも縦で戦えば頑丈な陣形でした。
短所
縦長い分、やはり弱点の側面も長いです。
なので側面を突かれると、軍を分断される可能性だってあり、かなり脆い陣形になってしまうんです。
実例
大きな戦では使われた形跡がありません。
⑦其の漆 雁行の陣
先ほどの長蛇の陣を改良したのが、この形!
斜めに陣を配置し、大将は場合によるのですが一般的には真ん中に置かれます。
長所
まず長蛇の陣同様に縦の攻撃に強いです。
また、長所と言っていいのか分かりませんが、真っ直ぐになっていないので長蛇の陣よりも比較的防御がしやすい陣形でした。
短所
それでも側面が弱点なのには変わりなく、長期戦などに弱かったのです。
実例
大きな戦では使われた形跡がありません。
⑧其の捌 衡軛の陣
この陣形は前列は鶴翼の陣、後列は横一列に並ぶという二列の陣形です。
大将は2列目の真ん中に位置します。
長所
鶴翼の陣は包囲しやすい形なので、やはり包囲殲滅に適しているんです。
短所
ですが、鶴翼の陣同様に敵軍より兵が少ないと包囲ができないので、場合によっては不向きでした。
実例
大きな戦では使われた形跡はありません。
おまけ 車懸かりの陣
最後に、中国から伝わってきた八陣とは違いますが、どうしてもご紹介したい陣形があります。
それが車懸かりの陣という陣形です!
この陣形は上杉謙信が愛していた陣形で、一見方円の陣に見えますが、攻撃するときにはタイヤのように回転して攻撃します。
これになんの利点があるかというと、回転すると今まで戦ってなかった疲れていない後ろの兵まで戦うことになるので、猛攻を仕掛けることが可能でした。
まさに超攻撃型ともとれる陣形ですね。
川中島の戦い(第4次)で上杉軍が使ったとされ、敵軍の大将である武田信玄の弟や、日本での八陣の生みの親である山本勘助を討ち取ったそうです。
まとめ
以上で陣形の解説を終わりたいと思います。
それぞれ陣形の強みがありましたが、それと同時に弱点もあることがお分かりいただけたかと思います。
要は最強の陣形などは無い、ということですね。
ご覧頂きありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ